本日、2019年3月20日より発売開始となったJVCの「画期的な」カナル型イヤホン用高音質イヤーピース
JVC スパイラルドット++(プラスプラス)EP-FX10シリーズ
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ノズルを交換するという切り口で人気を集めたハイレゾ対応イヤホン “SOLIDEDGE” HA-FD01 や特別モデル HA-FD01SP 、そして秋のヘッドフォン祭2018で公開され多くのお客様の支持を受けてVictorブランド復活を深く印象づけ、昨年の発売開始以来今も品薄が続いているハイエンドイヤホン “WOOD” HA-FW10000など、イヤホン部門が絶好調な同社ですが、今回発売された「スパイラルドット++(プラスプラス)」は、従来の「スパイラルドット+(プラス)」と、はたして何が違うのか?そもそもスペアイヤチップで、改良を施しただけで音質が違ってくるものなのか?
そのあたりの疑問を、開発者である株式会社JVCケンウッドのイヤホン部門 開発・技術担当 美和 康弘氏に直接お聞きしました!
フジヤエービック(以下「フ」):まずはJVCのイヤーピース・スパイラルドットの歴史を振り返るところから伺いたいと思います。
最初に「スパイラルドット」という名前が世に出たのは2014年ですよね?
美和氏(以下「美」):はい、2014年2月発売のWOODシリーズ「HA-FX650/750/850」に付属していたものが「初代スパイラルドット」になります。
イヤーピースで音質をもっと高められないか、といろいろ研究した結果、内壁にこのドット(へこみ)を渦巻状、つまりスパイラル配列にしたところ、これは良いんじゃないか?!と。
ドットによってイヤーピース内の反射音を拡散させて、そのままストレートに進んでくる音に対して雑味の混ざらないダイレクトな音になるよう設計しています。
フ:その後、2代目として登場したのが…
美:2017年12月発売のSOLIDEDGEプレミアムモデル「HA-FD01」に付属の「スパイラルドット+(プラス)」ですね。
このタイミングでは「本当にドットでいいの?」とか「ドットの配列はこれでいいの?」というような検討も行ったんですが、若干の改良はしたもののやっぱりドットがいいね、というところに落ち着きました。
フ:あれ、同時発売のSOLIDEDGE「HA-FD02」は違いましたっけ?
美:ええ、HA-FD02の方はスタンダードモデルとして初代スパイラルドットイヤーピースを付属することで差別化を図っています。
「スパイラルドット+(プラス)」が付属するのはHA-FD01(SP)とHA-FW10000の2モデルだけになります。
フ:「プラス」になって、「初代」とは明らかに素材が変わっていますよね?
美:そうです、「初代スパイラルドット」は従来のシリコン製でしたが、「スパイラルドット+(プラス)」は「プラスプラス」でも使われている“SMP iFit”という素材を採用しています。
これは人間の肌の弾力に近い素材で、非常にモチモチとした感触が特徴です。また、直接肌に触れるものですので、人体に安全な素材であることも重要でした。
フ:実は個人的にHA-FD01ユーザーでもあるのでよくわかります。あのモチモチ感は装着感に大きく影響していますよね。
そして「初代」登場から5年の歳月が流れ、今年2019年の3月20日に発売となるのがこの「スパイラルドット++(プラスプラス)」。
美:はい、素材としてはプラス同様“SMP iFit”を採用していますが、「プラスプラス」は「プラス」とは異なるグレードになっています。「プラス」ではイヤーピース表面もモチモチとしていたんですが、「プラスプラス」ではサラッとした感触になっています。
また、「プラス」は“SMP iFit”のみでできていますが、「プラスプラス」はリング(軸)の部分に高品質シリコンを採用したハイブリッド構成になっています。
フ:なぜ軸の部分だけ別の素材を?
美:専用設計であるHA-FD01やHA-FW10000のノズルには大きな”カエシ”があるので問題ないのですが、“SMP iFit”は非常に柔らかい素材なので、「プラス」を他のイヤホンで使おうとすると抜けやすかったり、ノズルにつけても安定しづらいという面があったんですね。もちろんメーカーとしてはJVCやVictorブランドのイヤホンで使っていただきたいんですが(笑)、単品販売するにあたってはいろいろなイヤホンでも使えるようにアレンジしたいなということでシリコンのリング(軸)にしました。
また、リング(軸)がしっかりしたので装着した際のポジションがより安定するという側面もあります。
フ:ちょっと答えにくいかも知れませんが…今回の「プラスプラス」、2ペア4個入りで2700円(税込)というのはけっこうその…挑戦的な価格ですよね。
“SMP iFit”という素材が、通常のシリコンに比べてケタがひとつ違うくらい高価なんです。
「プラス」でも、一部のモデルにしか付属させられないのもその辺が理由です。
「プラスプラス」はお値段としては高めではありますが、その分いろんなイヤホンでお試しいただけるようなつくりになっています。
フ:スパイラルドット++(プラスプラス)をHA-FW10000に付属させようというお話はなかったんですか?
美:実はほぼ並行して開発していたんですが…「プラスプラス」の開発でちょっと難しいところがあったのでタイミングがずれたのと、なによりこれを付属させるとHA-FW10000のお値段が上がってしまうので(笑)。
フ:「プラス」と「プラスプラス」で異なるのは“SMP iFit”素材のグレード、軸のシリコン素材、サイズごとの軸の色、という感じでしょうか?
美:実はものすごく細かい点なのですが…(と言いつつ「プラスプラス」をひっくり返す)
リング(軸)の厚みがちょっと薄くなっていて、裏側のカサとリング(軸)の間の空間、ここの間隔がほんの少しだけ広くなっています。
外見やリング(軸)の内径、カサの部分はまったく同じで、リング(軸)の外径だけが変わっているんです。
フ:(「プラス」と「プラスプラス」の裏側を見比べながら)なるほど…微妙ですけど確かに「プラスプラス」の方が広くなっていますね。
美:そうなんです、微妙に(笑)。でもこの微妙な違いをお客様にはちゃんとわかっていただけるんです。
いわゆるカサの部分の厚みなどはまったく同じなんですが、間隔が広がることで”つぶれ具合”が変わりますので。これによって装着感に違いが出ますね。
フ:「プラス」と「プラスプラス」の音質面の差というのは?
美:「プラスプラス」ではS/Nがさらに良くなって、よりディティールが出てきますね。
音像がキュッとシャープに、ステージ上のどこでどの音が鳴っているか、といういわゆる定位感が良くなっていると思います。
ハイハットなどの金属的な響き、余韻もかなり出てるかな、と。
フ:先ほどの違い以外、例えばドットの大きさや配列は同じなんですよね?
それでもそんなに音が変わるものなんですか?
やはり空気の振動を伝える部分なので、それが通るところの素材が変わると音への影響も大きいですね。
今までお使いのイヤホンでも、「プラスプラス」にしていただくことで新しい発見もあるんじゃないかなと思います。
フ:この「プラスプラス」を開発する時のリファレンスイヤホンは?
美:一番使っていたのはHA-FD01のステンレスノズルですね。フラットでディティールもしっかり出るので変化がわかりやすいんです。もちろんHA-FW10000やその他の弊社製品でも音を聴いて、どのモデルでも音の変化の仕方が同じというところも確認しています。
フ:うーん、それはHA-FD01ユーザーとして非常に気になるお話ですね。
開発の際にここは苦労したなあ、というポイントは?
美:これも普段見えないところなんですが…(と「プラスプラス」を裏返しておちょこ状態にする)。
カサとリング(軸)とで素材が異なる、というお話を先ほどしましたが、やっぱり別々の素材を組みあわせるのは大変なんですね。
単に平らな面をそのままくっつけると、その境目で音響特性がガラッと変わってしまうんです。
このように境目が波型になっているのは、じわっと音響特性が変わって違和感がないようにするためです。
フ:今回の「プラスプラス」登場で、「初代」や「プラス」はどうなるのでしょうか?
美:「初代」も「プラス」もそのまま継続です。
HA-FD01やHA-FW10000のようなJVCやVictorブランドのハイクラスイヤホンには「プラス」、それ以外のミドルクラスのイヤホンには「初代」が付属することになりますね。
「プラスプラス」は今のところ単品販売のみの予定です。
これでスパイラルドットシリーズも3モデルになりますので、お好みにあわせていろいろと試していただければ。
フ:それでは最後に、この「スパイラルドット++(プラスプラス)」に期待しているお客様へひとことお願いします。
美:間違いなく今お使いのイヤーピースとは音が変わると思います。特にディティールが良く出るような方向になるので、お手持ちのイヤホンで「あ、ここまで表現できるんだ」という発見もあるかな、と。
もちろん好みによっては…という部分もありますが(笑)、ぜひ一度「スパイラルドット++(プラスプラス)」をお試し下さい!
フ:本日は、インタビューをお受け頂きありがとうございました!春のヘッドフォン祭2019(2/27-28 中野サンプラザ開催)でも「スパイラルドット++(プラスプラス)」の試聴の準備、よろしくお願い致します!